認知症の記憶障害障害には、忘れていく順番があります。
その順番を知る事で、認知症の方への支援の方法が変わってきます。
その順番について、少し詳しく見ていきましょう。

今日もよろしくお願いします<m(__)m>
記憶を忘れる順番
- エピソード記憶
- 体験記憶
- 感情
- 思い出(長期記憶)
記憶は概ねこの1〜4の順に忘れていきますが、中にはこの通りにならない方もいらっしゃいます。
では、この順番で記憶を失うことでどのような現象が起こるのでしょうか?
エピソード記憶を忘れる
エピソード記憶とは、「起こった出来事」です。
簡単に説明をすれば、「食事をした事」や「花見に参加した事」を記憶出来ない、若しくは直ぐに忘れてしまうことです。
このエピソード記憶を忘れる事で、例えば家族や職員から「花見はどうでしたか?」と質問されても、「うん。良かったよ!」としか答える事が出来なくなります。
つまり、「花見はどうでしたか?」の「花見」と言うキーワードと自分残された記憶から、自分が今花見から帰ってきた事は理解できます。
が、何処で何の花を見たのかは覚えていません。
ですから、「花見=綺麗」という残された記憶から、「良かったよ!」と返答するしかないのです。
ストレートに表現できる方は「そんな所には行っていない!」と言えるのですがね(^◇^;)
体験記憶(手続き記憶)
この記憶は体験から得られる記憶になります。
例えば、自転車の乗り方や、リモコンの使い方、ATMの使い方がこの記憶になります。
認知症が進行してくると、ATMでお金が下せなくなったり、リモコンでチャンネルを変えることが出来ずに、ずっと同じチャンネルとみているようなことが起こります。車の操作もこの「体験記憶」ですので、操作が分からなくなり、アクセルとブレーキを間違うことが起こします。
さらに認知障害が合わさると、道路の逆走などが起こり、ニュースでも話題になっている認知症高齢者の交通事故が起こるのです。
感情
認知症の記憶障害で3番目に忘れるのが、この「感情」です。
もちろん認知症の方にも感情はきちんとあります。ですから、怒ったり泣いたり笑ったりするのです。
この感情は、認知症が進行してもかなら後半まで残ります。
例えば、言葉の理解力が低下しており、スタッフの説明が理解できなかったことで、介助することを説明したにも関わらず、突然怒り出すのは「感情」が残っているからです。
さらに、認知症の方は、生活の頼みの綱である記憶を障害されることで、「感覚」に頼る必要が出てきますので、相手の感情を読み取ることが得意になりますし、感情表現が豊かにもなります。
思い出
そして最後まで残るのが「思い出」です。
これは「認知症ケアを格段に楽にする中核症状の理解。」の中でも解説していますが、認知症になると、新しいことを覚えることが出来なくなります。新しい事を覚えることが出来なくなると、自分の中に残された記憶を頼ることになります。
その残された記憶が「思い出」です。
実際に80歳の方が、自分が80歳であることを忘れて、60歳の時の記憶(思い出)が残っているとします。
そうするとその方は、60歳の時代に戻っているのです。
「戻っている」という表現は、認知症ではない私達の表現であり、認知症の方にとっては60歳の時が「今現在」という事になります。
この順番で忘れることで起こること
このように、順を追って忘れる記憶で起こることがあります。
それは、接する介護者に対して「好き嫌い」が現れるという事です。
例えば、認知症の方を馬鹿にしたり、見下したりする職員がいるとします。
よく見ると、認知症の方から嫌われていて、ケアを行おうとすると抵抗したり、拒否されることが、他のスタッフより多くなります。
これはこの記憶を忘れる順番で起こります。
認知症の方でも、馬鹿にされたり見下されると不愉快な思いをします。
しかし記憶障害で不愉快な思いをした「出来事」を忘れます。
しかし、不愉快な感情は残ります。
それを繰り返すことで、「不愉快な思いをさせる人」の「印象」が残ります。
その「不愉快な思いをさせる人という印象」が、認知症の方に嫌われる人になります。
まとめ
認知症の記憶を忘れる順番と、嫌われる原因のメカニズムが分かったと思います。
しかしこれを逆に利用すると、良い印象や心地よい印象を与え続けることで、「良い人」「心地よい人」という印象を与えることが出来ます。
そうなることで、認知症の人が落ち着きます。落ち着くことで、BPSDが軽減することもあるのです。
つまり、感情が残ることを理解し、良い感情を残すケアを行うことが大切になります。
皆さんも、この記憶を忘れる順番を上手く活用してみてください。
では、今日はこの辺で!
ありがとうございました。(#^.^#)
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